◎時効学説
イ.訴訟法説
(意義):時効とは、時の経過自体に人証・書証に優越する証拠価値を与える訴
訟法上の証拠方法に関する制度。実体法とは無関係。
実体法上の権利と訴訟法上の権利が不一致になることはない。
=裁判の結果が実体法上の権利となる。
(存在理由):継続的事実の持つ推定力=採証の困難性の救済。
(効力):訴訟法上の証拠方法としての性格(法定証拠)。
(援用):法定証拠を裁判所に提出する行為(裁判上)
∴裁判外の援用不可。
(撤回):攻撃防御の一つなので可能。
(放棄):法定証拠を裁判所に提出しないという意思表示。
ロ.実体法説
(意義):一定の事実状態が永続する場合にそれが真実の権利関係と一致する
か否かを問わず、そのまま権利関係として認めようとする実体法上の
制度。
=権利得喪の原因(売買等と同じ)
(存在理由):公益ないし社会秩序の維持。
(根拠):援用は当事者の自由意思。文言に忠実。
(効力):実体法上の権利の得喪。
(イ)確定効果説
(効力):時効期間の完成で確定的に実体法上権利の得喪が生ずる。
(事実状態の尊重を重視)
(援用):訴訟上の攻撃防御方法の一つ。
∴裁判外の援用不可。
(撤回):攻撃防御の一つとして可能。
(根拠):162T「所有権を取得する」を重視。
(放棄):確定的に生じた時効の効果消滅させる意思表示。
(ロ)不確定効果説
(根拠):145条「援用するのでなければ」を重視。
(援用):時効により生ずる効力を確定させる意思表示
=実体法上の援用と訴訟法上の援用との二通りの意味がある。
∴裁判外でも行使可能。
(撤回)不可。
・停止条件説(判例・通説)
→援用を停止条件として実体法上の権利変動が生ずる。
=原則として生ぜず。援用によって生ずる。
(放棄):一応生じた時効を発生しないことに確定させる意思表示。
・解除条件説
→時効の利益の放棄を解除条件とする。
(放棄):一旦生じた時効の効果を消滅させる意思表示。
☆当事者の意思の重視
停止条件説>解除条件説>確定効果説
☆時効の援用の要件
@一定の事実状態の尊重
A一定の期間の経過
B意思表示(不確定効果説)