◎中止犯
◎法的性質
イ.政策説=黄金の橋
(批判):@原型と免除とを区別する理由がなくなる。
=減免は裁量的に行われる。 ←飴はひとつでいいはず。
A犯人が中止犯の存在を知っているとは限らない。
ロ.違法性減少説(結果無価値)
=中止行為により法益侵害の危険が消滅し、違法性が減少
←この立場に立っても、中止行為の主観面は必要。
(批判):@制限従属性説を採ると共犯にも中止犯が成立することになる。
A法益侵害の危険性判断に主観的要素を考慮するのは不当。
ハ.違法性減少説(行為無価値)
=中止により、反規範的意思が撤回され、合規範的意思の形成により、
違法性が減少する。
(批判):@刑法の機能は法益保護に求めるべきであり、違法性の本質に
関しては、純粋な結果無価値論を採るべき。
A制限従属性説を採ると共犯にも中止犯が成立することになる。
ニ.責任減少説
=中止行為により行為者人格に対する非難可能性(=責任評価)が減少。
(批判):@現行法において中止犯が認められるのは未遂のみ。
=倫理的動機により真摯に中止行為がなされた以上は、結果が
発生しても特典を与えるべき。結果が発生したのも関わらず、
中止犯の成立を認めると法文に反する。
A倫理的動機を要求することになり、法文に反する。
ホ.人格の改善を図る点に求める説
(批判):@そもそも人格改善は可能なのか。刑法の任務なのか。
◎成立要件
(1)実行の着手があること
→未遂の一種であるから。(cf.予備の中止)
(2)結果の不発生(因果関係切断の場合も含む)
中止行為をしたにも関わらず、結果が発生してしまった場合
→現行法上は中止犯は43条の一場面であるので、中止犯は不成立
(判例・通説)。 cf.主観説・責任減少説なら成立するはず。
(3)「自己の意思により」
・意義
イ.客観説=行為者の認識したところが一般人にとって通常犯罪の妨げ
になるか否か、によって判断する。妨げになるなら、障害
未遂。
→責任減少説とつながりやすい。
ロ.限定主観説=広義の後悔を必要とする。
(主観説+道徳的感情を要求)。
→責任減少説とつながりやすい。
ハ.主観説=「やろうと思えばできたが敢えてやらなかった(フランク
の公式)」=動機は問わない。
→違法性減少説とつながりやすい。
(4)中止行為
イ.着手未遂(実行行為が終了していない場合)
→単なる不作為で足りる。
ex.毒を注射しようとして直前にやめる。
ロ.実行中止(実行行為が終了している場合)
→結果不発生のための真剣な努力が必要。
ex.毒を注射してしまった後に、中止犯が成立を認めるには、病院へ
運ぶなど、真剣に結果発生防止のための措置が必要。
☆もっとも、イとロの区別は困難。結果から考える。
(5)中止行為と結果不発生との間の因果関係
→中止行為を行ったことによって結果が発生しなかったという因果関係が必要か。
→責任減少説に立てば不要。
∵致死量の毒を飲ませたら、中止犯の成立する余地があるのに、足りな
いときには中止犯成立の余地がないとするのは不均衡。
◎中止犯の処分
(1)常にその刑を減免。
(2)減免されるのは中止行為をした者のみ。他の共犯者に影響を及ぼさない。
→その根拠につき争いあり。
イ.政策説=一身的刑罰減免自由だから当然。
ロ.違法性減少説=違法が例外的に一身的に作用する場合。
→違法性は連帯的に。∵違法性は結果に対する危険性なので。
ハ.責任減少説=責任は行為者ごとに判断されるから当然。
(3)減免の効果は当該犯罪のみにしか生ぜず、科刑上一罪の関係にある他罪
には及ばない。